レアな炭素を数える
こんにちは、EIKIの馨です。
この世には真偽が定かではないものが沢山ありますが、
中には科学の力で決着を付けられるものもあると思います。
その一つ「放射性炭素年代測定」をご存じでしょうか。
有機物に含まれる特定の炭素の量を調べることで
元の生物が生きていた年代などを推定する技術です。
また、同じように特定の炭素を調べるもので
「尿素呼気試験」というものがあります。
これは人間の胃にピロリ菌がいるかどうかを調べる方法です。
先日臼井さんが2度のピロリ菌除去治療を受けたときのことをブログ記事にしてくれていますので、
具体的な治療の方法・手順について知りたい方はそちらを是非。
https://eiki-business.co.jp/blog/2023/01/06/341
https://eiki-business.co.jp/blog/2023/07/07/356
私は検査の仕組みの方を…
炭素について
炭素にレアもレアじゃないもあるのかという話ですが、
同じ炭素でも原子1個に含まれる中身の数が違う
「同位体」というものが存在します。
以下の3種類の同位体は
天然に存在する割合がほぼ一定に保たれていて、
炭素はその割合に大きな差があります。
・12C(炭素12、安定同位体)
中身:陽子6個、中性子6個
地球上の99%弱がこれ。レアじゃないやつ。
・13C(炭素13、安定同位体)
中身:陽子6個、中性子7個
地球上の1%強。それなりにレア。
ピロリ菌の検査に使われる。
・14C(炭素14、放射性同位体)
中身:陽子6個、中性子8個
多くある大気中でも1兆分の1くらいの超レア。
放射性炭素年代測定に使われる。
炭素の同位体は他にもいくつかあって、
この3つ以外は人工的に作られるものなので
今回は無視しますが全て放射性同位体です。
放射性同位体というのは、
時間経過とともに壊れていくもののことで、
炭素14の場合は崩壊すると窒素14になってしまいます。
この崩壊の際に出るのが放射線(ベータ線)です。
最近話題になったトリチウムは水素の放射性同位体です。
安定同位体は時間経過では勝手に壊れません。
ピロリ菌について
正式名称は「ヘリコバクター・ピロリ」。
名前の由来は「ヘリコ(螺旋状の)」+「バクテリア(細菌)」と、
最初にこの菌が見つかった胃の出口(ピロルス)から。
胃は胃酸のおかげで強い酸性になっているので、
基本的に細菌は死滅しますが、
ピロリ菌はウレアーゼという酵素を生産しており、
これによって胃粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解できます。
このアンモニアで自分の周りだけ胃酸を中和して生息しています。
ピロリ菌はいらすとや(https://www.irasutoya.com/2015/05/blog-post_24.html)
ピロリ菌は胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、
果ては胃癌まで様々な病気の原因になります。
尿素呼気試験法
臼井さんが受けた検査方法です。
「紙袋がパンパンになるまで息を吐く」と書かれていた通り、
袋に集めた息の中の炭素を調べます。
検査の手順
①素の状態で息を集める
②診断薬(13C-尿素)を飲む
③寝たり座ったりしながら20分待つ
④息を集める
これで調べるのは炭素13。
元々人体にも含まれていますし、
安定同位体なので飲んでも安全性に問題はありません。
診断薬は尿素(化学式CH4N2O)のCが13Cになっているもの。
胃にピロリ菌がいた場合、
飲んだ尿素をアンモニアと二酸化炭素(CO2)に分解するので、
出来た二酸化炭素は13Cを含んでいます。
その二酸化炭素が胃の粘膜→血液→肺と運ばれるので、
診断薬を飲んだ後の息を調べて13Cを含む二酸化炭素の量が増えているなら
ピロリいますね~となるわけです。
この検査方法以外にも内視鏡使ったりとかいろいろあるらしいですが、
簡単でしかも痛くないのでこの方法が一番よさげですかね…
一番最初に出てきた炭素年代測定法、
ピロリ菌検査と似てるなって思って出したので、
特に意味はありませんが、
次回の内容はこれかも。
参考:
東京大学総合研究博物館「真贋を科学する 年代物——ほんとうはいつ頃のもの?」
http://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DPastExh/Publish_db/2001Hazama/01/1400.html
東京大学総合研究博物館「放射性炭素(炭素14)で年代を測る」
http://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DKankoub/Publish_db/2000dm2k/japanese/02/02-12.html
大塚製薬「ピロリ菌の検査と除菌治療」
https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/h-pylori/tests-and-eradication/
武田薬品工業「ピロリ菌の発見」
https://www.pylori-story.jp/pylori/pylori/discover/