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2022/04/26

ヘビ周辺の語源

英揮ブログ
 

プログラミングの知識は全くないのですが、
あるところでプログラミング言語には「Python(パイソン)」という名前のものがあると聞き、
蛇となんか関係あるのかなと思って調べてみたら、
開発者であるグイド・ヴァン・ロッサムさんが
「空飛ぶモンティ・パイソン」というイギリスのコメディ番組のファンだったから、
だそう。

じゃあこの名前の由来は?諸説あるようですが、
モンティというのは英語圏の人名であるモン(ト)ゴメリーの愛称で、
それにニシキヘビの英名であるパイソンをくっつけたということらしいです。


以前ヘビと毒の話をしたときは学名や語源まで入れられなかったので、
今回はそれ系の話です。

日本でも英名をよく目にするもの中心に集めました。




ヘビ亜目(学名Serpentes)


ヘビは「爬虫綱有鱗目ヘビ亜目」の総称で、
学名はラテン語の名詞serpēns(蛇)から来ています。

この名詞を更に遡ると動詞のserpō(這う)です。

ですから元々の意味としては「(地面を)這うもの」だったということですね。

分類学の父カール・フォン・リンネが命名者です。


英語でもほぼ同じ綴りでserpentがあります。

特に大きな蛇を指す語で、
昔のフランス語を経由して入ってきました。

今では殆ど詩的表現として使う単語のようですが、
エデンでイヴを唆した蛇を言う場合はこれです。

なので悪魔だの誘惑者だのあんまりいいイメージはないみたい…

因みに一般的な方の単語snakeは、
ドイツや北欧などのゲルマン語経由なので全くの別系統ですが、
やはり「這う」という意味の印欧祖語に行き着くようです。




ニシキヘビ属(学名Python)


最初にちょっと出てきたやつですが、
ペットとして人気のボールパイソンなど、
割と聞いたことのある単語だと思います。

ギリシア神話に出てくる巨大な蛇の怪物
Πύθων(ピュートーン)をラテン文字に置き換えたものがそのまま英単語としても使われています。

元々、フランスの動物学者フランソワ・マリ・ドゥダンによって、
毒が無い斑模様の蛇に対して提唱された名前でした。


・ボールニシキヘビ(学名Python regius、英名Ball python)

 身を守るときボールの様に丸くなるのが英名の由来。

 学名のregiusは「王の」「華麗な、素晴らしい」という意味で、
 模様の美しさからアフリカの王族が身に付けていたことからきているそうです。
 ちなみにドイツ語名はKönigspython (König=英語のking)なので学名の意味と一緒ですね。


・アミメニシキヘビ(学名Malayopython reticulatus、英名Reticulated python)

 和名も学名も英名も「網目状の」が由来。

 軽く調べた感じではドイツ語、ロシア語、中国語でも「網」が付いていました。

 昨年かな?
 民家から脱走したとニュースになったのはこの種です。

 ニシキヘビ属に入れてしまったんですが、
 割と最近このアミメニシキヘビとティモールニシキヘビの2種が
 マレーニシキヘビ属という独立した属として認められているそうです。

 ちょっと学名の命名方法に問題があって揉めた様で、
 参照する資料によって表記はまちまちでした。

 気になる人は調べてみてね。



クサリヘビ科(学名Viperidae)


クサリヘビと聞いてもあんまり馴染みがないかもしれませんが、
マムシとかハブ、ガラガラヘビが属する科です。

英語のviperとラテン語のvīpera(どちらも毒蛇という意味)、
もうお分かりの通り、
ここに属する殆どの種が毒蛇です。

元々のラテン語はvīviparaで「胎生の」という意味。

胎生または卵胎生の毒蛇を指していたようです。


・ガラガラヘビ属(学名Crotalus、英名rattlesnake)

 尻尾が赤ちゃん用の玩具ガラガラの様な見た目、
 音から。

 学名のcrotalusにはカスタネットという意味もあり、
 学名がCrotalus horridusとなっているシンリンガラガラヘビは
 「恐ろしいカスタネット」という意味にも取れるのでちょっと面白いですよね。



ボア科(学名Boidae)


独立した科とする説とニシキヘビ科の亜科とする説があるそうですが、
今回は語句の違いの話なので別にしました。

蛇関係の単語として聞いたことがなくても、
フワフワした洋服の生地として「ボア生地」とか聞いたことありませんか?

元は毛皮や羽毛を使った長い襟巻のことを大蛇(ボア)に見えることからそう呼んでいて、
その延長で毛足の長い生地のことも指す様になったそうです。


・アナコンダ属(学名Eunectes) 

 映画とかによく出てくるめっちゃでかい蛇としてあまりにも有名。

 学名はεὐνήκτης(エウネークテース、「上手に泳ぐもの」)という古典ギリシア語から。

 確かに水の中にいるイメージですよね。

 アナコンダという名前自体はインドやスリランカで話されるタミル語で「象を殺すもの」という意味らしいのですが、
 これはその地方に生息するニシキヘビの仲間を指している様で、
 学名の方が指しているものとは別みたいです。

 名前付け間違えたっぽい。

 調べたけどこれ以上のことはよく分からなかったのでタミル語が読める方は是非調べて詳細を教えてほしい…



爬虫類カフェとかにいるヘビちゃんたちは可愛かったですけど
10mの蛇に出会したくはないな…

毒がなくても絞め殺しにくるタイプは窒息じゃなく心臓を止めにくるらしいですよ。
 

 

参考
Macaroni「研究社「新英和大辞典」第4版
研究社「羅和辞典」増補改訂版
「Private Zoo Garden」
https://pz-garden.stardust31.com/hacyuurui/hebi/nisikihebi-ka/ball-nisikihebi.html

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