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2022/11/11

両方右手

英揮ブログ
 

こんにちは、語源とか調べるのが好きな馨です。

よく使われる単語はもちろん、学校ではまず習わないし、
日常会話でも使用頻度は高くないような単語とか、
語源を辿ると面白い意味や表現だったりします。

日本語と比べるとどうだろう、とか楽しいです。

覚える必要が無いという気軽さも楽しめる理由の一つでしょうか(笑)




ambi-系


「両方の~、ふたつの~」を表す接頭辞です。


この文字の並びに意味があると思って調べたことのある人は少ないと思いますが、
もし、学生時代に知っていたら割と便利だったかもしれません。

ラテン語の”ambō”という単語由来で、英語でいう”both”の意味です。

 

・ambivalent「相反する感情を持つ、両義的な、曖昧な」

 日本語でもアンビバレントって片仮名で使ったりもしますよね。

 valentは”value(価値、意義)”の意味で、
 ” valeō(力のある、健康な、価値がある)”というラテン語から来ています。

 なので「二つの価値を持つ」「どちらの意味にも取れる」「曖昧な」
 というような意味に派生していきました。

 

・ambidextrous「両利きの、非常に器用な、二心のある」

 両手を同じように使えることを日本語では「利く」と表現しますが、
 英語では「右手が二つある」という表現になるんですね。

 ラテン語の”dexter(右、右手の、熟練した)”という単語は、
 英語にも同じ綴りで右側や右手を表す単語として存在しています。

 皮肉った言い方として使った場合「二心のある」という意味になりますが、
 これは両陣営に対して器用に渡りをつけていることを両利きに例えているようです。

 因みにどの時代、地域でも右利きの割合は9割くらいらしいですよ。

 

・ambisinistrous「不器用な、ぎこちない」

 二つの右手があるなら、二つの左手もあるのでは、と思いました?

 ありました(笑)

 両方利き手ではないということで不器用という意味になります。

 “sinister”は元のラテン語では「左」が本来の意味ですが、
 他にも「悪い、敵対的な、不吉な」という意味がありました。

 同じ綴りの単語を英語でも使っていますが、
 左という本来の意味よりも、悪い意味の方がメインで使われているようです。

 

・ambitious「大望のある、野心的な、熱望して」

 クラーク博士の”Boys be ambitious” が有名です。

 大元はambi- +”eō(行く)”で、
 ” ambiō(ぐるぐる歩きまわる)”という単語から。

 ここでのambi-は両方というよりも、複数の場所、周辺などの意味になります。

 ここから“ambitiō”という派生語が出来て、
 それが「周囲に好意を求めて努力する」、
 「公職の立候補者が有権者に投票のお願いをして回る」
 という意味だったので、
 現代の英語では野心とか熱望の意味になっています。

 

・amphidromous「両側回遊性の」

 日本語でも専門家以外は使わなそうな単語ですね(笑)

 魚のアユなど、普段の生息域と産卵は川(淡水)だけど、
 一旦海に出て戻ってくるタイプのことです。
 
 英語の方、ambi-とはちょっと綴りが違いますが、
 これは同じインドヨーロッパ祖語を語源に持つ古典ギリシア語の
 ”ἀμφίς(アンフィス、両側で)”由来の為。

 意味はほぼ同じです。
 
 -dromousも古典ギリシア語由来で、
 ” δρόμος(ドゥロモス、走ること/航路)”が元になっています。


最後の単語、一番使わなさそうですが、
呪術廻戦という漫画に出てくる「死滅回游」を調べたときに見つけて入れてしまいました。

魚の方にも「死滅回遊」という言葉があって、
英語では”abortive migration(失敗した渡り)”だそうです。

物語に何か関係あるでしょうか…?

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