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2023/12/20

鉱物の名前

英揮ブログ
 

こんにちは、馨です。

子供の頃買ってもらった図鑑の宝石についてのページで
誕生石に日本語の名前と英語の名前が書かれていて意味もなく覚えたりしたな、
と思い出したので、
面白い名前とかあったかなと記憶をほじくり返しつつ調べてみました。


鉱物とは


まず鉱物とは何か?から。

道端の石とか、
火山にごろごろしている岩とかは、
様々な鉱物が集まって出来ています。

定義としては
「地質作用で生じる、一定の化学組成と結晶構造を持つ個体物質」
だそうです。


 ① 成分となる元素(化学組成)がほぼ一定
 ② 原子が規則的に並んでいる(結晶構造)
 ③ 地質学的過程を経て形成されている


①と②は多くのものが満たせる条件なので、
重要なのは③で、細かく規定があります。


例えば…

 ・地質学的過程には地球以外の天体も含む 
 ・生物の一部(歯や骨)は鉱物ではないが、化石になれば鉱物とする
 ・自然作用で出来た物でも元が人工物なら鉱物ではない


なので、宝石として扱われる真珠は、
生物の体内で作られ地質作用を受けていない為、
鉱物ではありません。

また、天然の硝子である黒曜石はパッと見た感じ鉱物っぽいですが、
結晶構造を持たず、
不純物を多く含み一定ではないので鉱物とはされていないようです。


勿論何事にも例外は存在するもので、
自然水銀や水は常温で液体ですが、
融点の低い鉱物として承認されているそうです。

まあ…氷は鉱物っぽいといえばそうかな…?




鉱物の学名


生物と同じように鉱物にも学名が存在します。

「国際鉱物学連合」という学術団体の中にある、
「新鉱物・鉱物命名委員会」という専門の組織が、
新鉱物の審査と命名、
既存の鉱物名の改名などを行っています。

生物はだとラテン語由来の単語を使用し、
属名+種小名の二名法(例:ヒト…Homo sapiens)ですが、
鉱物は基本的に1単語だけで、
地名・人名・外観・化学組成などを元にして、
大抵語尾に”-ite(アイト)”か”-lite(ライト)”が付く場合が多いです。

(古典ギリシア語で石や宝石を意味する”λίθος(lithos)”由来の接尾辞)


人名から付ける場合には、
発見者本人の名前を付けてはいけないというルールがあり、
鉱物に関連のある人物名でなければなりません。

なので鉱物学に貢献した学者や恩師などへの献名として付けられたものが多いようです。

愛する人の名前♡とかはダメということですね。

人名以外も全く関係のない名前は承認してもらえないそうです。


宝石の名前


一般に宝石と呼ばれるものは鉱物としては同じものでも色の違いなどによって別の名前が付けられていることがあります。

学名は種として特定されたものにしか付けられないので、
例えば有名なところではルビーとサファイアは同じコランダムという鉱物で、
結晶にクロムが含まれると赤くなり、
ルビーと呼ばれます。

赤が薄い物や、
赤以外の色だとサファイアと呼ばれています。


■コランダム(corundum)

タミル語でルビーやサファイアを意味するKuruntam又はkurundamから。

(タミル語の文字はちょっとわかりませんでした…)

酸化アルミニウムの結晶から成る鉱物。

純粋なものは無色透明。

非常に硬い。


・ルビー(ruby)

  ラテン語の”Rubeus(赤)”から。

  アルミニウムが1%程クロムに置き換わって赤色をしているもの。

  宝石としていい感じの割合で置き換わることが希なので高価。

  クロムが多すぎると黒っぽくなって宝石扱いされません。


・サファイア(sapphire)

  ラテン語の”sapphirus(青い宝石)“が直接の由来。

  ただし当時はラピスラズリのことを指していたようです。

  赤以外で色の付いたコランダムで、
  宝石となるものの総称。

  チタンと鉄の両方を含んでいると青くなる。

  含まれる元素の違いによるカラーバリエーションが豊富で、
  ニッケルだと黄色、コバルトだと緑、チタンと鉄とクロムの3種類で紫、
  クロムの量が少ない薄いピンクもサファイアに分類されます。


■石英(quartz)

古いドイツ語の”Quarz zwarc(水晶)”から。

二酸化ケイ素の結晶。

純粋なものは無色透明。

はっきり六角柱の形に結晶しているものを水晶(crystal)と呼びます。


・アメシスト(amethyst)

  古典ギリシア語の”ἀμέθυστος(améthustos)”から。

  意味は「酔わせない」で、
  ワインを薄めたような色から、
  これで酔うことはない、ということで、
  飲酒時の酔い防止のお守りとして身に着けていたことからこの名前になったそう。

  紫色の原因は微量の鉄がケイ素と置き換わって、
  その鉄が放射線の影響で酸素から電子を受け取るというなんかめんどくさそうなことが起きる為。

  この状態はあまり安定していないので、
  紫外線などの強い光で褪色してしまいます。


・シトリン(citrine)

  ラテン語の”citrus(シトロンの木)”から。

  英語では柑橘全般を指しますが同じ綴りでシトラスってありますよね。

  シトロンは日本語だと枸櫞(くえん)と言い、
  クエン酸の名前の由来になった果物です。

  レモンに似た色をしており、
  その色を指すシトリンが宝石の名前にも当てられています。

  天然物は少ないようで、
  一般に安く出回っているものはアメシストに熱を加えて黄色くしたものだそう。

  仕組みとしては電子を受け取っていた鉄が熱を加えることで電子を手放し元の状態に戻るから。

  鉄イオンが持つ電子の数によって吸収する光の範囲が変わることが色の違いの原因です。


他にも同じ種類の鉱物で宝石名は別というのはあるんですが、
語源まで入れたら長くなってしまったのでこの辺で。

…第2弾あるかも??



参考:
地質調査総合センター「地質ニュース 1973年1月号 No.221 鉱物徒然草(2)」
https://www.gsj.jp/data/chishitsunews/73_01_03.pdf

東京大学物性研究所「物性研だより第54巻第2号」
https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/docs/tayori54-2_Part11.pdf

東京大学物性研究所「日本から発見された新鉱物たち(一覧)」
https://mdcl.issp.u-tokyo.ac.jp/denken/?page_id=14

Online Etymology Dictionary – amethyst
https://www.etymonline.com/jp/word/amethyst

Online Etymology Dictionary – citrine
https://www.etymonline.com/jp/word/citrine

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