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2022/12/06

『ザリガニの鳴くところ』感想

英揮ブログ


今回ご紹介する映画は、アメリカの大ヒット小説を実写化した映画、「ザリガニの鳴くところ」になります。以下、あらすじです。ネタバレもありますのでご注意ください。



あらすじ


家族から見捨てられ、
少女時代からノースカロライナの湿地帯でひとり暮らすカイア(デイジー・エドガー=ジョーンズ)。

誰にも頼らずひとりで生きていく彼女の身に、
ある日突然、殺人の容疑がかけられる。

彼女が暮らしている湿地帯で、
町で人気の青年の死体が発見されたのである。

決して罪を認めない彼女は圧倒的に不利である裁判員裁判に臨むことになるが……。




『ミステリー』というよりむしろ……「ザリガニの鳴くところ」の魅力


タイトルだけだとさっぱり内容がピンとこない「ザリガニの鳴くところ」ですが、
実のところ本作のジャンルはミステリー

あらすじにも書いた通り、
あるひとりの女性が殺人者としての容疑をかけられるところから物語が始まります。

とはいえ、
ミステリーを期待していくとやや肩透かしを食らうというか、
思ったよりもミステリー要素は濃くありません


上映時間120分の間で、
殺人事件の発生(ミステリー要素)、
幸せな家族生活から一転ハードな幼少期(小公女的要素)、
テイトやチェイスといった“王子様”との出会いと別れ(恋愛要素)、
裁判中の弁護士と検事のやり取り(法廷バトル要素)と、
目まぐるしくジャンルが変わる上に時間軸が交差していきます

とはいえ、
いちいち丁寧な伏線が張られるおかげか、
「ここがどうしてこうなったの?」といった混乱を招くようなこともなく、
そういった意味ではストレスなく見ることができました。

重くて暗い展開も多々あり、ミステリーというよりもダークなディズニープリンセス映画として見た方がいいかもしれません。


実際、ストーリーはある程度覚悟していたこちらの想像を軽く超えてきたほどハード

開始早々に殺人容疑で捕まえられた後、
DV癖のある父親に虐げられて幼少期を過ごし、
母親や兄姉は次々と家を出ていき、
学校へ行ってみても汚い身なりを笑われ差別され、
ひとり残されたボロ屋でムール貝を売って生活するようになる……
といった彼女の半生が語られるシーンが流れるのですが、
見ていてかなりしんどくなります。


それでも最後までスクリーンから目を離せなかったのは、
ストーリーの暗さを息を呑むほどの映像美が中和してくれていたから。

イメージとは裏腹に、
青々とした森林と済んだ空が広がったロケーションで撮影された映画であり、
湿地帯を舞台にした物語と聞いて薄暗い画面に終始するのかとばかり考えていたので、
予想外にいいものを見られた気分になりました。


また個人的に白眉だったのが、稀に見るほどの最低男、チェイスを演じたハリス・ディキンソンの演技。

映画「マレフィセント」で真人間の王子様を演じたのがあてつけに思えるような最低男っぷりは、ある種の清々しさすら感じたほどです。


「すずめの戸締り」や「スラムダンク」などの話題作に挟まれる時期での公開ゆえ、
気づけば上映終了していてもおかしくないような作品です。

映像が本当に美しい一本なので、
ぜひとも映画館でご覧になってはいかがでしょうか。

興味のある方はぜひ映画館へ足を運んでみてはいかがでしょうか。



『ザリガニの鳴くところ』公式サイト
https://www.zarigani-movie.jp/

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