Mr.井出のオススメ映画
2025/02/20
今回ご紹介する映画は、ジェシー・アイゼンバーグ主演の「リアル・ペイン~心の旅~」となります。
ネタバレもありますのでご注意ください。
ニューヨークに住むユダヤ人のデヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)とベンジー(キーラン・カルキン)は、
亡くなった最愛の祖母の遺言で、
ポーランドでのツアー旅行に参加する。
従兄弟同士でありながら正反対の性格な二人は、
時に騒動を起こしながらも、
ツアーに参加したユニークな人々との交流、
そして祖母に縁あるポーランドの地を巡る中で、
40代を迎えた彼ら自身の“生きるシンドさ”に向き合う力を得ていく。
(映画公式サイト(https://www.searchlightpictures.jp/movies/realpain)より引用)

ベンジーを演じた際のキーラン・カルキン。
「ホームアローン」シリーズのマコーレ・カルキンの兄妹でもあります。
本物はもっとチャーミングです。(画・筆者作)
派手なことは何一つ起きないのに…
この映画の特徴はなんといっても、
劇中において派手なことは何一つ起きないという点。
主人公たちがホロコーストを学ぶツアーに参加し、
ツアー終了後に地元へ帰って来るだけなので、
何が起きるわけでもないのは当たり前といえば当たり前なのですが……
だというのにスクリーンから目を離せないだけの魅力があるのがスゴイ。
観ていて飽きがこないのは、
映画全体の丁寧な造りももちろんなのですが、
なんといっても助演であるキーラン・カルキンの演技のおかげ。
どんな時にもどんな相手にも決して取り繕わない、
愛すべき厄介者(厄介者のことをリアルペインと呼ぶ英語のスラングもあるらしいです)の
ベンジーを演じたキーランの演技はどこまでも自然体で、
プライベートでカメラを回したのかなと思わせるほど。
ゴールデングローブ賞を二年連続で受賞した快挙も納得でした。
映画上映時間は昨今では珍しく、
きゅっとまとまって90分。
それゆえに作中でも何かと慌ただしく時間が流れていきます。
時間に追われた行程ゆえに、
ツアーガイドから与えられる情報を聞き流しながら様々な史跡をポンポンと巡っていく劇中の人物を眺めていると、
こちらまでツアー旅行に参加している気分になっていく造りとなっています。
そしてまさにその点こそが本作における構造のキモで、
映画中盤にベンジーが
「お前のツアーは情報ばかりで痛みが感じられない!!過去の悲惨な出来事がまるで他人事だ!!」と
ツアーガイドに感情のまま噛みつき、
他人事のように映画を観ていたこちらをハッとさせるのです。
(ホロコーストと聞けば海外の出来事なので実感が湧かない人もいるかもしれませんが、
日本における第二次世界大戦だと考えれば私たちにもある程度の納得は生まれるはず。)
さてこんなベンジーですが、
映画の中盤を過ぎたころ、
彼に自殺未遂を試みた過去があったことが発覚します。
たとえ思い付きでもそんなことをするようなタイプには微塵も見えない彼でさえも、
どこにでもいる人と同じかそれ以上に、
本当の痛みを心に抱えているということがわかるのです。
結局劇中では最後までベンジーの痛みの原因は作中で明かされず、
そして彼の痛みが完璧に癒えるということはないのですが……
それでも、
旅を通じて彼の痛みが和らいだと思えたのは、
ベンジーの微笑みで映画が終わったことによる清涼感のマジックだったかもしれません。
「痛み」を抱えながら生きていく人たちの隣にそっと寄り添うような暖かい映画。
ドラマチックでも大感動スペクタクルでもないけど、
久々に「いい映画を観たな」という気分にさせてくれた一本でした。
今年のアカデミー賞戦線を賑わせること間違いなしの、
おすすめしたい一本です。
映画「リアル・ペイン~心の旅~」感想

今回ご紹介する映画は、ジェシー・アイゼンバーグ主演の「リアル・ペイン~心の旅~」となります。
ネタバレもありますのでご注意ください。
あらすじ
ニューヨークに住むユダヤ人のデヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)とベンジー(キーラン・カルキン)は、
亡くなった最愛の祖母の遺言で、
ポーランドでのツアー旅行に参加する。
従兄弟同士でありながら正反対の性格な二人は、
時に騒動を起こしながらも、
ツアーに参加したユニークな人々との交流、
そして祖母に縁あるポーランドの地を巡る中で、
40代を迎えた彼ら自身の“生きるシンドさ”に向き合う力を得ていく。
(映画公式サイト(https://www.searchlightpictures.jp/movies/realpain)より引用)

ベンジーを演じた際のキーラン・カルキン。
「ホームアローン」シリーズのマコーレ・カルキンの兄妹でもあります。
本物はもっとチャーミングです。(画・筆者作)
派手なことは何一つ起きないのに…
「リアル・ペイン~心の旅~」の魅力
この映画の特徴はなんといっても、
劇中において派手なことは何一つ起きないという点。
主人公たちがホロコーストを学ぶツアーに参加し、
ツアー終了後に地元へ帰って来るだけなので、
何が起きるわけでもないのは当たり前といえば当たり前なのですが……
だというのにスクリーンから目を離せないだけの魅力があるのがスゴイ。
観ていて飽きがこないのは、
映画全体の丁寧な造りももちろんなのですが、
なんといっても助演であるキーラン・カルキンの演技のおかげ。
どんな時にもどんな相手にも決して取り繕わない、
愛すべき厄介者(厄介者のことをリアルペインと呼ぶ英語のスラングもあるらしいです)の
ベンジーを演じたキーランの演技はどこまでも自然体で、
プライベートでカメラを回したのかなと思わせるほど。
ゴールデングローブ賞を二年連続で受賞した快挙も納得でした。
映画上映時間は昨今では珍しく、
きゅっとまとまって90分。
それゆえに作中でも何かと慌ただしく時間が流れていきます。
時間に追われた行程ゆえに、
ツアーガイドから与えられる情報を聞き流しながら様々な史跡をポンポンと巡っていく劇中の人物を眺めていると、
こちらまでツアー旅行に参加している気分になっていく造りとなっています。
そしてまさにその点こそが本作における構造のキモで、
映画中盤にベンジーが
「お前のツアーは情報ばかりで痛みが感じられない!!過去の悲惨な出来事がまるで他人事だ!!」と
ツアーガイドに感情のまま噛みつき、
他人事のように映画を観ていたこちらをハッとさせるのです。
(ホロコーストと聞けば海外の出来事なので実感が湧かない人もいるかもしれませんが、
日本における第二次世界大戦だと考えれば私たちにもある程度の納得は生まれるはず。)
さてこんなベンジーですが、
映画の中盤を過ぎたころ、
彼に自殺未遂を試みた過去があったことが発覚します。
たとえ思い付きでもそんなことをするようなタイプには微塵も見えない彼でさえも、
どこにでもいる人と同じかそれ以上に、
本当の痛みを心に抱えているということがわかるのです。
結局劇中では最後までベンジーの痛みの原因は作中で明かされず、
そして彼の痛みが完璧に癒えるということはないのですが……
それでも、
旅を通じて彼の痛みが和らいだと思えたのは、
ベンジーの微笑みで映画が終わったことによる清涼感のマジックだったかもしれません。
「痛み」を抱えながら生きていく人たちの隣にそっと寄り添うような暖かい映画。
ドラマチックでも大感動スペクタクルでもないけど、
久々に「いい映画を観たな」という気分にさせてくれた一本でした。
今年のアカデミー賞戦線を賑わせること間違いなしの、
おすすめしたい一本です。