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2023/06/08

映画「岸部露伴 ルーヴルへ行く」

英揮ブログ


今回紹介する映画は「岸部露伴 ルーヴルへ行く」です。

物語の核心に触れる部分もあるのでご注意ください。



あらすじ


世界的に著名な漫画家、
岸辺露伴(高橋一生)は、
オークションで売りに出されていた「黒い絵」を購入したことにより、
「この世で最も黒く、邪悪な絵」の存在を思い出す。

その絵がルーヴル美術館にあることを知った彼は担当編集者である泉京花(飯豊まりえ)と共にフランスを訪れるが、
美術館の職員ですら露伴の探す絵の存在は知らなかった。

データベースを参照すると、
その絵が保管されている場所はすでに使用されていない地下倉庫で……。



人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフ作品である
「岸部露伴は動かない」をNHKが実写化。

その原作再現精度の高さと主演を演じた高橋一生のあまりの岸部露伴っぷりが大きな話題を呼び、
映画化まで至ったのが「岸部露伴ルーヴルへ行く」になります。


ストーリーとしては「世にも奇妙な物語」風で、
ざっくりと言ってしまえば抗えない大きな力に翻弄される人間の話

全体的にはサスペンスホラー風味ではありますが、
ビックリするようなポイントはなく、
また話は映画で完結しているため、
ドラマはもちろん原作を観ていない人でも安心して楽しめる内容となっております。

ただ、劇中に蜘蛛が出るシーンが非常に多く、
そういった点が苦手な方は注意が必要ですが……。


さて本作の特徴はなんといっても、
120%の力で原作の雰囲気を再現した映像。

画面のどこを見ても徹頭徹尾「岸辺露伴」の世界で、
ドラマの時とは予算はもちろんスタッフの気合の入り方も違うことが一目で見てわかるほどです。


画面の端に映る程度の小道具のひとつひとつにすら魂が込められている印象で、
とくに露伴の仕事場である書斎を映したシーンからはそれを顕著に感じました。

さまざまな顔料の原材料や画材、資料等が煩雑に、
しかしどこか整然と並べられた部屋が映るシーンは、
ただ部屋を映しただけのシーンのはずなのに思わず息を呑むほどでした。


他にも特筆したいのが、
物語の中心となっている
「この世で最も黒く、邪悪な絵」について。

こちらの全貌は物語終盤になってようやく明かされるのですが、
その謳い文句に違わない渾身の一作となっており、
艶やかな黒色のみで描かれた美しい女性の絵は、
それを見たら呪われるという設定に強い説得力を生んでいました。


また、この手の原作付きの作品は
いかに原作を忠実に再現するか」で評価が決まるところもあったりしますが、
本作では大胆な原作改変要素があり、
しかしその点が物語をグッと引き締めていたのも印象的でした。


その点というのが映画の終盤に待っている、
「この世で最も黒く、邪悪な絵」が生まれた顛末について

原作漫画においてはさらりとした回想が挟まれるだけだったこのシーンを、
映画ではある程度の時間をかけてたっぷりと描写しています。

その一連の映像があまりに時代劇的で岸部露伴的でない異質な雰囲気を放っているのですが、
それにもかかわらず不思議と作品に馴染んでいるのです。


上映時間は2時間たっぷり。

原作においての後味の悪さも控えめにしてあり、
万人に勧められる作品です。

お時間ある方は鑑賞してみてはいかがでしょうか。



映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』公式サイト
https://kishiberohan-movie.asmik-ace.co.jp/

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