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Mr.井出のオススメ映画
2018/08/21

300万円とゾンビと映画と

英揮ブログ


都内一部の映画館で代わるがわる細々上映されている、
数多くのインディーズ映画。

大抵の作品は多くの人の目に留まることなく上映終了を迎え、
一部の映画好きからひっそりと評価されては劇場から消えていくという運命を迎えるのですが……


そんなインディーズ映画の中から、
モンスターが現れました。

ということで、
今回ご紹介するのは今話題沸騰中のゾンビ映画、
カメラを止めるな!」です。


ネタバレありきでも十分楽しめるとは思いますが、
一切の情報を仕入れずに観た方がいい映画だと思うので、
「なんでこんな評判になっているのかを知りたい」という方以外は迷わず回れ右がオススメです。

以下、あらすじになります。



あらすじ


自主映画の撮影隊がとある山奥の廃墟でゾンビ映画の撮影をしていた。

監督は主演女優の演技に不満を持ち、
ひたすらリテイクを繰り返している。

そんな中、撮影隊に本物のゾンビが襲い掛かってきて……。




超低予算ワンカットムービー……?
「カメラを止めるな!」の魅力


簡単に説明するなら、
「ゾンビ映画の撮影をしていたら本当のゾンビが出てきた! どうしよう!」
といったコンセプトのホラームービー。


全編ワンカット……

つまり、一切カメラを止めずに撮影された映画であり、
「カメラを止めるな!」というタイトルはまさにここからきているわけです。


ワンカット長回しのゾンビ映画というのは新鮮で、
ハリー・ポッターのおよそ5000分の1の製作費(300万円)で作られたにしてはそれなりの出来ではありましたが、
全体的に安っぽいのはもちろんのこと、
思い切りカメラ目線で演技をする俳優がいたり、
ところどころに妙な間があったり、
全体を見れば微妙な感じ。

1800円を払って観ているのでなければ思わず席を立ってしまうレベルの映像が、
およそ40分間も続きます。

「ワンアイデアを形にするため撮影した心意気は立派だけど出来たのがこれじゃどうかな……」なんて、
観ている誰もが思うことでしょう。


……が、
こう思ってしまっている時点で観客である我々は、
既に監督の手のひらの上で踊ってしまっているのです。


 出来の悪いゾンビ映画のエンディングロールが流れると共に、
ONE CUT OF THE DEAD」だなんてカッコつけたタイトルがスクリーンに大きく映し出されて画面が暗転……

そして映画はもう一度始まります

ここからが、この作品の本領発揮です。


場面が変わると、
先ほどのゾンビ映画で監督役を演じていたひげ面の冴えない男、
日暮という映画監督が登場します。

ここで、先ほどの「ワンカットオブザデッド」が劇中劇だということがわかるわけです。


映画はここから「いかにしてあのワンカットオブザデッドが製作されたのか?」という話を中心に展開していくのですが、
その前後半に分けられたネタばらし的二重構造が本当に面白い。

「あの不可解な行動はこんな理由があったのか!」とか、
「あの不自然な間が生まれたのはあのせいだったのか!」とか、
山積みになっていた疑問や不満が次々と解決・解消され、
笑いに変わっていくのは爽快のひと言に尽きます。


映画の後半は笑いっぱなしの展開の連続なのですが、
観客を笑わせるだけでは収まらないのがこの作品の凄さ。

クリエイターたちの苦労と喜びというテーマがしっかり明示されており、
またそれが無理なく脚本に練り込まれているので、
笑いと感動が互いに邪魔しあうことなく同居しているのです。


映画の前半でおよそ40分もダメダメなゾンビ映画を見せているにも関わらず、
映画全体の上映時間が96分で、
それでいて鑑賞後にまったく疑問点が残らない作りも素晴らしい。

無駄のない脚本と監督の手腕が本当に冴えていました。


この映画が話題になっているのは、
やはりあの斬新な二重構造のおかげだとは思いますが、
それを知っている上で鑑賞してもなお面白いことは間違いありません。

公開当初は全国2館だった上映館も、
現在は150館以上に拡大中ですので、
気になった方は是非とも見に行ってみてはいかがでしょうか?




『カメラを止めるな!』公式サイト
http://kametome.net/index.html

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