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2021/04/21

映画『BLUE』感想

英揮ブログ

今回紹介するのは、
松山ケンイチ主演のボクシング映画『BLUE』となります。

ネタばれもありますのでご注意ください。



あらすじ


プロボクサーの瓜田信人(演・松山ケンイチ)は、
ボクシングへの情熱は誰にも負けず、練習も日々欠かさずこなすものの、
思うように勝ちを掴めずにいる。

一方、彼の後輩である小川一樹(演・東出昌大)は、
彼より遅くボクシングをはじめたにもかかわらず、
日本チャンピオン一歩手前という戦績を残していたが、
パンチドランカー寸前の症状が出ていた。


 ある日、ふたりが所属する大牧ボクシングジムに、
バイト先の女の子にいいところを見せたいという動機を持つ男、
楢崎剛(演・柄本時生)が入会し……。





ボクシングという世界の明暗を描いた傑作 映画『BLUE』の魅力


コロナウイルスのせいで公開スケジュールが延びたおかげなのか、
今年は邦画豊作の年。

年の初めから『花束みたいな恋をした』や、『ヤクザと家族』、『すばらしき世界』など、
日本アカデミー賞に絡んでくること間違いなしの作品が次々に公開されていきました。


今回紹介する映画『BLUE』も上記の例にもれず、
まさに傑作というべき完成度の高さです。


まず、なんといっても圧巻なのは主要キャストの映画にかける情熱。

この映画のためにボクシングジムに通い続け、
二年間も身体づくりに努めたという松山ケンイチをはじめとして、
東出昌大や柄本時生の三名の肉体は、
本物のボクサーと遜色変わりないほどの仕上がり。

身体づくりだけでなく、
劇中で観られるボクシングシーンもすばらしくて、
『ロッキー』シリーズのような派手さこそないものの、
常に寄りの視点で撮られた映像には生の迫力が感じられます。


キャストの演技については、
もう全員「すばらしかった」の一言なのですが、
個人的に大好きだったのは、
映画中盤において瓜田の対戦相手として立ちはだかる比嘉を演じた松浦慎一郎の演技


この比嘉というキャラクターが本当イヤなヤツで、
すぐに倒せる相手をいたぶるように殴り続けたり、
試合中にガードを下げて相手を挑発したりと、
スポーツマンシップの精神なんてどこ吹く風のやりたい放題

そのうえに、わりとしっかり強いせいで一発貰う場面も少なく、
見ているこちらが「コノヤロー!」と憤慨する憎らしさでしたよ。

そのぶん、瓜田のリベンジを誓う楢崎に手痛い一撃を食らわされたシーンは観ていてスッキリできたのですが(笑)。

松浦慎一郎さんは本当にいいキャラを貰って、
それに応えるいい演技をしていたなあと思います。


また、「ボクシング」という世界の明暗が描かれた物語も本当に好み。

練習中のスパーで脳出血し意識不明になるシーンや、
日本チャンプになったにもかかわらず、
パンチドランカーの症状が出たせいもあり引退 → 
“チャンピオン”から“ただの人”になったことにより周囲からの扱われ方が一変してしまう一連の流れなど、
ボクシング界の華やかでない現実を淡々と見せつけてくれるのです。


キャラクターたちの背景を“あえて”しっかり描かないことにより、
観客に物語を読み取る余地を残した脚本はまさに見事のひと言。

吉田監督が構想含めて8年かけて書いたというだけあり、
引き算に引き算を重ねて生み出された脚本は、
観ているだけで監督の苦労が伝わってくるほどでした。


派手さはない映画ではありますが、
ボクシング映画界に名を残す傑作であることは間違いありません。

お時間あればぜひ鑑賞してみてはいかがでしょうか。





『BLUE/ブルー』公式サイト
https://phantom-film.com/blue/

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