Mr.井出のオススメ映画
2020/04/01
今回ご紹介するのは三池崇史監督の映画『初恋』になります。
ネタバレなどございますのでご注意ください。
葛城レオ(窪田正孝)は、
専門雑誌で特集が組まれるような未来あるボクサー。
ある日の試合後の検査で脳腫瘍が見つかり、
自身の余命が僅かだと知った彼が、
茫然自失のまま新宿の歌舞伎町をうろついていると、
そこでモニカ(小西桜子)という少女と出会う。
彼女を追っていた悪徳刑事の大伴(大森南朋)を殴り倒したことをきっかけに、
ふたりは知らず知らずのうちに任侠者同士の抗争に巻き込まれていくが……。
三池崇史監督といえば、
近年では『ジョジョの奇妙な冒険』やら『テラフォーマーズ』やら、
なにかと全年齢向けのマンガを実写化してはコケているイメージがある監督。
ですが本来の三池監督は、
『十三人の刺客』をはじめとした流血・斬首なんでもありのバイオレンスアクションやえげつないホラーなどを得意としており、
いうなれば上記のような漫画の実写映画は、
本当の力をセーブしている状態で作った作品とも言えます。
それで、今回の映画『初恋』ですが、
「これぞまさに三池崇史だ!」と拍手を送りたくなるほど、
頭からつま先まで〝三池節〟が詰め込まれた映画でした。
まず、この『初恋』というシンプルすぎるタイトル。
一見したところ、
イケメン俳優と人気女優が不用意にくっついたり離れたりするだけのティーン向け映画のようですが、
全然違います。
冒頭から人の首が飛び、コワモテのオジサンが怒鳴り声をあげ、
ヒロインの女の子が理不尽な目に遭うなどと、
もうやりたい放題。
「初恋なんてタイトル今すぐ投げ捨てて、
『歌舞伎町裏通り時獄篇』みたいなタイトルにした方がよいのでは?」
と思うほどのイヤーな展開が続きます。
で、しばらく嫌なシーンが続いた後にようやく主演の窪田正孝が登場するわけですが、
だからといって映画の雰囲気が明るくなるわけでは決してない。
むしろ、ボクシングの試合で格下相手に負けた挙句、
若くして余命宣告されるなど、どんどんどんどん暗いシーンが続きます。
お互いどん底のさらに底にいる主人公とヒロイン。
このふたりが出会うことにより、
ようやく物語が動きはじめるわけですが、
ここからは確かに、
主人公とヒロインの出ている場面に限れば『初恋』というタイトルにふさわしいシーンが続きます。
街の片隅の神社で思い出話をしてみたり、
イヤホンを分け合って同じ音楽を聴いてみたり、
電車に乗り込んで思い出の土地へと行ってみたり。
まさに青春恋愛映画なシーンが展開されるわけですが、
これを心穏やかに観られないのは、
「一方その頃……」のようなノリで、
任侠者達が繰り広げる迫力しかないやり取りや、
ベッキーが襲ってきた男の頭蓋骨を素足で踏み砕くバイオレンスなアクションなどが挟まれるから。
本作は群像劇の手法を取っているため、
こういったシーンは物語上必要ではあるのですが、
主人公達が出ているシーンとのギャップが激しすぎて、
もう笑うしかありません。
中盤以降、舞台は新宿歌舞伎町から千葉へ。
そこで登場人物同士の思惑がぶつかりあって、
物語はさらに加速。
銃撃戦やカーチェイスが繰り広げられたと思ったら、
唐突に主人公の脳腫瘍が誤診であることが判明。
ほっとするのも束の間、
逃げ込んだホームセンターで任侠VS裏切り者VS悪徳警官VSチャイニーズマフィアのサバイバルがはじまるなど、
もう大騒ぎと言う他有りません。
このように、全編通して比較的ハチャメチャな展開が続くわけですが、
それでもぐいぐい引き込まれたのはやはり演者の力が大きかった。
主演の窪田正孝や、ヒロインの小西桜子はもちろん、
不倫騒動以来、なにかと吹っ切れた役を演じるようになったベッキーや、
とにかくシブかっこいい内野聖陽、コワいオジサン役をやらせたら世界一の塩見三省など、
様々な方の力演が光りましたが、個人的にMVPをあげたいのは染谷将太。
序盤はいかにも頼りない風の男だった彼が、
物語が進むにつれてヤケクソになっていく様は愉快かつ狂気的です。
個人的にはここ数年の邦画で一番楽しく見ることが出来た作品でした。
コロナウイルスの影響もあり、
映画館にはなかなか行きづらいタイミングかと思われますので、
配信などがはじまったらぜひとも見てはいかがでしょうか。
『初恋』公式サイト
https://hatsukoi-movie.jp/
映画『初恋』感想
今回ご紹介するのは三池崇史監督の映画『初恋』になります。
ネタバレなどございますのでご注意ください。
あらすじ
葛城レオ(窪田正孝)は、
専門雑誌で特集が組まれるような未来あるボクサー。
ある日の試合後の検査で脳腫瘍が見つかり、
自身の余命が僅かだと知った彼が、
茫然自失のまま新宿の歌舞伎町をうろついていると、
そこでモニカ(小西桜子)という少女と出会う。
彼女を追っていた悪徳刑事の大伴(大森南朋)を殴り倒したことをきっかけに、
ふたりは知らず知らずのうちに任侠者同士の抗争に巻き込まれていくが……。
タイトル詐欺……ではない! 映画『初恋』の魅力
三池崇史監督といえば、
近年では『ジョジョの奇妙な冒険』やら『テラフォーマーズ』やら、
なにかと全年齢向けのマンガを実写化してはコケているイメージがある監督。
ですが本来の三池監督は、
『十三人の刺客』をはじめとした流血・斬首なんでもありのバイオレンスアクションやえげつないホラーなどを得意としており、
いうなれば上記のような漫画の実写映画は、
本当の力をセーブしている状態で作った作品とも言えます。
それで、今回の映画『初恋』ですが、
「これぞまさに三池崇史だ!」と拍手を送りたくなるほど、
頭からつま先まで〝三池節〟が詰め込まれた映画でした。
まず、この『初恋』というシンプルすぎるタイトル。
一見したところ、
イケメン俳優と人気女優が不用意にくっついたり離れたりするだけのティーン向け映画のようですが、
全然違います。
冒頭から人の首が飛び、コワモテのオジサンが怒鳴り声をあげ、
ヒロインの女の子が理不尽な目に遭うなどと、
もうやりたい放題。
「初恋なんてタイトル今すぐ投げ捨てて、
『歌舞伎町裏通り時獄篇』みたいなタイトルにした方がよいのでは?」
と思うほどのイヤーな展開が続きます。
で、しばらく嫌なシーンが続いた後にようやく主演の窪田正孝が登場するわけですが、
だからといって映画の雰囲気が明るくなるわけでは決してない。
むしろ、ボクシングの試合で格下相手に負けた挙句、
若くして余命宣告されるなど、どんどんどんどん暗いシーンが続きます。
お互いどん底のさらに底にいる主人公とヒロイン。
このふたりが出会うことにより、
ようやく物語が動きはじめるわけですが、
ここからは確かに、
主人公とヒロインの出ている場面に限れば『初恋』というタイトルにふさわしいシーンが続きます。
街の片隅の神社で思い出話をしてみたり、
イヤホンを分け合って同じ音楽を聴いてみたり、
電車に乗り込んで思い出の土地へと行ってみたり。
まさに青春恋愛映画なシーンが展開されるわけですが、
これを心穏やかに観られないのは、
「一方その頃……」のようなノリで、
任侠者達が繰り広げる迫力しかないやり取りや、
ベッキーが襲ってきた男の頭蓋骨を素足で踏み砕くバイオレンスなアクションなどが挟まれるから。
本作は群像劇の手法を取っているため、
こういったシーンは物語上必要ではあるのですが、
主人公達が出ているシーンとのギャップが激しすぎて、
もう笑うしかありません。
中盤以降、舞台は新宿歌舞伎町から千葉へ。
そこで登場人物同士の思惑がぶつかりあって、
物語はさらに加速。
銃撃戦やカーチェイスが繰り広げられたと思ったら、
唐突に主人公の脳腫瘍が誤診であることが判明。
ほっとするのも束の間、
逃げ込んだホームセンターで任侠VS裏切り者VS悪徳警官VSチャイニーズマフィアのサバイバルがはじまるなど、
もう大騒ぎと言う他有りません。
このように、全編通して比較的ハチャメチャな展開が続くわけですが、
それでもぐいぐい引き込まれたのはやはり演者の力が大きかった。
主演の窪田正孝や、ヒロインの小西桜子はもちろん、
不倫騒動以来、なにかと吹っ切れた役を演じるようになったベッキーや、
とにかくシブかっこいい内野聖陽、コワいオジサン役をやらせたら世界一の塩見三省など、
様々な方の力演が光りましたが、個人的にMVPをあげたいのは染谷将太。
序盤はいかにも頼りない風の男だった彼が、
物語が進むにつれてヤケクソになっていく様は愉快かつ狂気的です。
個人的にはここ数年の邦画で一番楽しく見ることが出来た作品でした。
コロナウイルスの影響もあり、
映画館にはなかなか行きづらいタイミングかと思われますので、
配信などがはじまったらぜひとも見てはいかがでしょうか。
『初恋』公式サイト
https://hatsukoi-movie.jp/