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Mr.井出のオススメ映画
2019/02/19

ボクシングと家族と映画と

英揮ブログ


今回ご紹介する映画は、
2015年に公開された「クリード チャンプを継ぐ者」の続編。

「クリード 炎の宿敵」になります。

以下、あらすじになります。

ネタバレもありますのでご注意ください。



あらすじ


ロッキーの指導を受け、ついにボクシングヘビー級世界チャンピオンになったアドニス・クリード。

長年付き合ってきた女性と結婚して子どもを授かるなど順風満帆な人生を送っていた彼に、
ロシア人ボクサーのヴィクターが挑戦状を叩きつける。

ヴィクターの正体を父の仇であるイワン・ドラゴの息子だと知ったアドニスは、
父のリベンジを誓って試合に挑むが返り討ちにあってしまう。

試合終了直前に行われたヴィクターの反則行為により辛うじて王者のベルトは守られたものの、
身も心もボロボロになったアドニスはボクシングと距離を置き始める……。




ヒーローの再起! そして……
「クリード 炎の宿敵」の魅力


「ロッキー」シリーズ最高傑作という声すら上がる「クリード チャンプを継ぐ者」の公開から4年。

待ち望んでいたその続編がいよいよ公開されました。

基本的なストーリーは「ロッキー」シリーズの「2」、「3」、「4」のイイトコ取りで作られた、
良くも悪くも既存ファンに向けた既視感のある話。

しかし、物語の柱として家族というテーマを据えることにより、
従来のシリーズと大きく差別化が図られています。


今作ではボクシングを通じて3つの家族について語られます。

ひとつが、伝説のボクサーであるロッキー・バルボアの家族。

もうひとつが、ロッキーの弟子であるアドニス・クリードの家族。

最後のひとつが、ロッキーにとって因縁の相手であるイワン・ドラゴの家族です。


息子と長年連絡を取っておらず孫の顔すら知らないロッキー、
偉大なボクサーである父親の栄光に怯えるアドニスと、
それぞれの家族が目を背け続けてきた大きな問題に向き合うことが本筋となっている今作ですが、
個人的には、ロッキー、アドニスの両者にとって大きなライバルとなるドラゴ家族の描写が素晴らしかったことを推していきたい。


ロッキーへの復讐のためだけに息子を育て続けたイワン・ドラゴと、
大きすぎる父の期待に応えるためだけに冷徹なボクシング・マシーンと化したヴィクター・ドラゴ。

親子の絆もへったくれも無かったふたりが、
互いにとって負の象徴だったボクシングを通して本当の家族になるというプロットはどこか見覚えのあるものの、
イワンを演じたドルフ・ラングレンの寡黙でシブい演技はもちろん、
格闘家であるフロリアン・ムンテアヌの映画初出演とは思えない存在感ある演技力がその点をしっかりカバー。

劇中の描かれ方も相まって、
序盤から中盤までは「このふたりが主人公なのでは?」と錯覚させるほどでした。


しかし終盤に近付くと、
敗戦によりウジウジしていたアドニスが生まれたばかりの娘との交流により覚醒。

主人公の座をライバルから取り戻します。

自分にはボクシングしかないということを改めて自覚し、
荒野の真ん中という過酷な環境下にあるトレーニング施設(通称:虎の穴)で身体と精神を鍛えなおし、
ヴィクターという最大の敵に真っ向から立ち向かっていく背中はまさにヒーロー。

これを見て泣かなければもうウソです。


修行の甲斐あり、
アドニスはヴィクターに勝利を収めますが、
今作においてもっとも重要なシーンはまだまだこれから。

リング上でスタッフや観客に祝福されるアドニスを、
ロッキーはひとりリングサイドから遠く眺めながら「これからはお前の時代だ」と呟きます。

この意味深なセリフは、
ロッキーがボクシング界から完全引退するということを示唆しており、
実際、シルベスター・スタローンは「ロッキーを演じることはもう無いだろう」といった発言までしています。


つまりこの映画は、
偉大なヒーローであるロッキーと観客が別れを告げるための作品でもあったのです。


その後の展開をざっくり書いておくと、
ロッキーは長年会うことを避けていた息子と再会、
アドニスは父親の栄光の影を振り払うことに成功し、
ドラゴ親子は仲睦まじくふたり並んでランニングするなど、
それぞれの家族問題は決着。

絵にかいたような大団円で映画は終わっていました。


「ロッキー」シリーズの全てが詰まっていると言っても過言ではないこの作品。

ロッキーに思い入れのある方は絶対に見るべき作品となっております。

上映中のところは少なくなっていると思いますので、
終了前にスクリーンで鑑賞してみてはいかがでしょうか。




『クリード 炎の宿敵』公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/creed/index.html

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