TOP > 英揮ブログ > 晩秋とミニシアターと映画と
Mr.井出のオススメ映画
2016/10/28

晩秋とミニシアターと映画と

英揮ブログ

晩秋の訪れと映画


朝晩が冷え込む季節になってきました。

昼との温度差が激しく、
体調を崩した人が多いのか、
街を歩いているとマスクをしている人が目立ちます。



今回紹介する映画は、
『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』です。

以下、簡単なあらすじになります。


あらすじ


舞台は1920年代のニューヨーク。

名編集者であるパーキンズは、
フィッツジェラルドの「楽園のこちら側」や、
ヘミングウェイの「老人と海」などの名著を世に送り出してきた。

ある日彼は、
様々な出版社でたらいまわしにされてきた、
無名作家のトマス・ウルフの原稿を読んでその才能を見抜く。

2人は互いの才能に惚れあい、友情を育んでいくが……。


対照的なふたり


実在の人物であるパーキンズとウルフとの関係に焦点を当てて、
それを映像化したのがこの作品。

といっても、
ドキュメンタリのように淡々と実際の出来事が描かれていくわけではなく、
映画にするにあたっての起承転結はきっちり作っていたので、
そういった点は好印象。

また、20世紀初頭のニューヨークにおけるあまり綺麗とはいえない街並みや、
演者の服装や小物など、
しっかりした映像造りはスクリーンから埃臭さまで漂ってきそうなほどでした。


天才同士である2人の出会いから別れまでが描かれたストーリーは、
『対比』が大きなキーワードとなっています。

仕事優先の生活を送りながらも、
心の奥では家族のことを大切にしているパーキンズと、
仕事のみに没頭して家のことを顧みないウルフ。

実直な性格のパーキンズと、
絵にかいたような自由奔放のウルフ。

自分に無いものを持つからこそ互いに惹かれあい、
ひとつの目標に向かって共に進んでいく彼らの関係性は、
まさしくバディムービーの王道で安心して見ていられました。


決して派手な映画ではないけれど…


しかし、

実話を基にした映画なのでこれは当然のことながら、
ストーリーや展開において派手な要素は皆無。

『キングスマン』でキレキレのアクションシーンを演じていたコリン・ファースも、
『シャーロックホームズ』シリーズで街を駆け回っていたジュード・ロウも、
2人そろってすっかり大人しく、
今作ではせいぜい空き家の窓ガラスを割るのが関の山。

今作と同じように、
実話を基にしたクリント・イーストウッドの映画、
「ハドソン川の奇跡」などに比べれば絵的に地味なのは否めません。

それでも、100分を超える上映時間があっという間に過ぎていくように感じられたのは、
地味さを補って有り余るほど俳優陣の演技が輝いていたからです。

パーキンズを演じたコリン・ファースの、
立ち姿と眼だけで喜怒哀楽の全てを表現する『不器用な男』の演技。
ウルフを演じたジュード・ロウの、
感情の動き全てが表情と身体に出てしまう、
パーキンズとは違った意味で『不器用な男』の演技。

起伏の穏やかなストーリーと、
映画の中に終始漂う灰色めいたニューヨークの雰囲気が、
イギリスを代表する2人の俳優の演技をより際立たせます。


大きな映画館では上映しておらず、
都内で観るにはミニシアター系の劇場に足を運ぶしかありませんが、
コリン・ファースかジュード・ロウのファンでしたら必見です。

静かな雰囲気の映画なので、
秋の風を感じる今の季節に鑑賞するにはぴったりだと思います。

仕事帰りに足を運んでみるのはいかがでしょうか?


『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』公式サイト
http://best-seller.jp/

関連記事