長い英単語
こんにちは、
まだ小学校ではちゃんとした英語の授業が無かった世代の馨です。
英語の授業では単語テストとかあったかと思いますが、
“environmental(環境の)”が初期に出てくる重要単語としては長い単語の筆頭だった覚えがあります。
長い単語というのは「長大語」といって
クイズなどでも定番ネタとしてよく出ますし
ちょっと調べれば沢山見つかると思うので、
ここでは由来とか成り立ちを…
sesquipedalian
ズバリ「長い単語」という意味です(笑)14文字なのでこれ自体はそこまで長くない。
・名詞:長い単語、長い単語を使う人
・形容詞:(言葉について)長い、過度に長い単語の使用に関する
元々ラテン語の”sesquipedalis(1フィート半の長さの)”という形容詞から派生した単語です。
前半の”sesqui-“は1½を表す倍数接頭辞。
(※倍数接頭辞…数を表す接頭辞。”pentagon(五角形)”の”penta-(5つの)”など)
後半はラテン語の”pes(足、フィート)”の形容詞化した形。
“-ian”は「~に関する、~のような」という意味の名詞・形容詞を作る英語の接尾辞。
なのでそもそものラテン語では長さを表す意味しかありませんでした。
単語の長さに限定する意味を持つようになった経緯ですが、
まず、紀元前18世紀頃の詩人ホラティウスが書いた詩についての論文「詩論(Ars Poetica)」の中で、
“sesquipedalia verba(1 フィート半の長さの言葉)”
というフレーズで使われています。
紀元後17世紀、
イギリスの辞書編纂者トマス・ブラントが
「グロッソグラフィア(Glossographia)」という辞書を出版しました。
これはヘブライ語、ギリシャ語、ラテン語などから借用された難解な単語を解説するもので、
その中でこのフレーズについて、
「偉大で、力強く、高尚な言葉、多くの音節からなる非常に長い言葉を表すために使用した言葉」
と説明しています。
この用法に倣って英語では
「多くの音節から成る」→「(単語が)長い」
という使い方がされるようになった様です。
関連語として以下のようなものがありました。
・sesquipedarianism…17文字
(会話・文書において)長く、時に曖昧な言葉を使う習慣
・hippopotomonstrosesquipedaliophobia…35文字
長い言葉恐怖症
※一応由来
”hippos(馬)”+”potamos(川)”=カバ
monsutrum=モンスター、怪物
この二つは単語自体の長さと誇張表現の為に足されているだけ。
“phobia(恐怖症)”は古典ギリシア語の”phobos(恐怖)”から。
おふざけの造語みたいなもので、
正式には”sesquipedalophobia”(18文字)とされているようです。
floccinaucinihilipilification
「ほとんど価値がないと見なすこと、無価値と評価する行動または習慣」
非専門用語で辞書に載っている最も長い単語だそうです。
29文字。
以下の5つを組み合わせて作られています。
・floccus…(羅)羊毛の房、毛束、(比喩的に)些細なこと
・naucum…(羅)木の実の殻、つまらないもの、少量
・nihilum…(羅)何もないこと、無価値
・pilus…(羅)毛、髪、取るに足らない量
・-ification…(英)「~すること、~化」を意味する接尾辞
3つ目は「ニヒル」「ニヒリズム」とかで多少馴染みがある単語じゃないでしょうか。
使われている4つのラテン語ですが、
16世紀頃からのイギリスにおいて標準的なラテン語教科書だった
「イートン・ラテン文法」という文法書の中で、
「安価な」「タダで」という似た意味の言葉として一緒に載っていた単語です。
当時のパブリックスクールの生徒は全員この本を暗記していたとか!
上等な教育を受けた男性たちの間で冗談っぽく作られた造語が、
なんかかっこいい!賢そう!と思った(かどうかは知りませんが)
後世の人たちの間で人気を博して有名になったそう…
古いものだと1741年に書かれた手紙の中で確認されているので、
辞書に載るだけあって長大語の中では割と使用頻度が高いのかも?
pseudopseudohypoparathyroidism
「偽性偽性副甲状腺機能低下症」
辞書に載っている造語ではない最長の単語。
30文字。
「長い単語恐怖症」とは違って
アメリカの内分泌学者オルブライトが発見した希少疾患の正式名。
医学用語は基本古典ギリシア語由来と思って下さい。
ほぼ言い換えが出来ず丸暗記するしかないとか…
・pseudo-…偽りの、仮の、疑似の
・hypo-…(医)不足した、未満の
・para+ thyroid…隣接した+甲状腺=副甲状腺
・-ism…(医)症状、治療法、またはそれらの理論
“hypoparathyroidism(副甲状腺機能低下症)”という病気があって、
それと同じような症状だけどちょっと違うやつで
“pseudohypoparathyroidism(偽性副甲状腺機能低下症)”があり、
更にそれによく似ているけどちょっと違うことが分かり…
というような経緯でpseudoが2個頭にくっついているみたいです。
頭文字のpは発音しないのでスードーみたいな発音になります。
本当は病名などの専門用語は避けたかったのですが、
辞書に載っているようなまともな?単語があまりなくて…
長くする為だけに作られた造語が殆どのようです。
それでも、
作られた背景とかストーリーは面白かったりするので、
興味の出た方は是非調べてみて下さい!
参考:
Oxford English Dictionary
「sesquipedalian」
https://www.oed.com/dictionary/sesquipedalian_adj?tl=true
「floccinaucinihilipilification」
https://www.oed.com/dictionary/floccinaucinihilipilification_n?tab=meaning_and_use#4127089
Madrigal Communications
「Floccinaucinihilipilification and the Eton Latin Grammar」
https://madrigal.com.au/floccinaucinihilipilification-eton-latin-grammar/
小児慢性特定疾病情報センター
「偽性偽性副甲状腺機能低下症」
https://www.shouman.jp/disease/details/05_17_031/