その他
2019/08/06
こんにちは、馨です。
皆さん学生時代、英単語の綴りを覚えるのにどんな方法を使っていましたか?
発音には出てこない文字があったりして、
仕方なく無理矢理ローマ字読みにしてみたり…
なんで発音と綴りがこんなにも違うのでしょうか?
英語の大雑把な成り立ちは、
少し前のブログ「言語の分類」でもう書いたので
気になる方はそっちも覗いて見て下さい。
言語系統と時代区分はこんな感じ。
インド・ヨーロッパ語族
→ゲルマン語派
→西ゲルマン語群
→アングロ・フリジア語群
→古英語(5~11世紀)
アングロ・サクソン語とも。アルフレッド大王が活躍。
中英語(11~15世紀)
フランス語大量流入。時代・地域・階級によって方言の差が大きい。
近代英語(16~19世紀)
発音がかなり変わる。シェイクスピアもこの時代。
現代英語(20世紀以降)
話者がすごく増える。借用語や新語もどんどん増える。
中英語あたりまでは日本のローマ字読みの様に
発音と綴りがほぼ一致していました。
15世紀の間に印刷技術の発展と書物の普及で綴りは固定されていきましたが、
発音はそのまま変化を続けたために今のような差異が生まれました。
正書法、つまり語を正しく表記するためのルールを
発音に合わせて改定することがなかったんですね。
正確には「アクセントのある長母音の舌の位置が一段ずつ高くなり、
それ以上高くなれないものは二重母音になった」
だそうです。
例えば現代英語の”name”(名前)という単語は
アクセントが“a”にあり、二重母音「エイ」の発音ですが、
昔は長母音「アー」でした。
だから「ナーメ」みたいな感じで発音していました。
(最後の”e”を読まなくなったのはまた別の理由なので後程)
“see”のように「セー」→「シー」とか。
現代英語の発音とローマ字読みに差が出るのは大体これの所為では…
英語が難しく感じる原因の一つにこの黙字の多さがあります。
読まない理由はそれぞれ。
主なものを少し上げてみます。
一番よく目にすると思います。
まず、元々は発音していて読まなくなったもの。
上で出てきた”name”を例にしますが、
古英語だと”nama” または”noma”
中英語だと”name” または”nome”
のように語末がa→eになっています。
こういったアクセントの無い母音の変化は「母音弱化」と言います。
まあ多少ごにょっとして聴き取れなくても
あまり支障がないような母音の発音は弱くなりがちです。
中英語ではとりあえず発音上も「エ」という音で残っていましたが、
更に弱くなって今では発音しなくなりました。
あともう一つ、綴りに後からeを加えたパターン。
綴りにも発音にも元からeは関係ありませんでした。
しかし、上で出てきた”name”のように、
① アクセント部分の長母音が二重母音化
② 語末のeが黙字化
これによって語末のeを、
直前の母音を長母音(二重母音)で読むための指示記号のように使い、
一番後ろにくっつけたものもあります。
win→wyn→wine
「ウィン」じゃなくて「ウィーン(現在はワイン)」ですよという風に。
“psychology”(サイコロジー、心理学)のように、
最初のpを完全に無視していますが、
元は古典ギリシア語の”ψυχή”(プシュケー、息)由来の言葉で、
ラテン語にしたとき最初の文字が”ps”と置き換えられ、
それをそのまま輸入した為、今でも残っています。
英語的にこのような二重子音を発音するのは難しいらしく、
最初の文字は読まないことになりました。
学術用語など古典ギリシア語やラテン語から
直接借用しているものに多いようです。
また、ラテン語由来のフランス語を経由して入って来た語で、
入って来た時点で既に黙字となっていたもの、
“hour”のhとかもそのまま黙字になっています。
古英語では発音していたのに今では黙字となっているもの。
母音でも子音でも、発音上「強い」というのは
発音しにくいという事でもあるので、
段々音が曖昧になっていく(=弱くなっていく)ことがあります。
また、その発音を聞く側にとっても
聴き取りやすい音、聞き取りにくい音があります。
段々弱くなり最終的に発音しなくなったという事です。
他にも様々な理由で黙字は存在しています。
発音しやすいように音が変わっていくことは
どの言語にもよくあることです。
発音に合わせて表記の仕方を変えた言語もあります。
英語の綴りは比較的古い形を残していて
私としてはとても好みなのですが、
もしこれから変わってしまうとしたら
ちょっと寂しいな…
参考
Online Etymology Dictionary
https://www.etymonline.com/
尾崎天の英語史blog
http://blog.livedoor.jp/amaneozaki_english/
英単語の発音と語源
こんにちは、馨です。
皆さん学生時代、英単語の綴りを覚えるのにどんな方法を使っていましたか?
発音には出てこない文字があったりして、
仕方なく無理矢理ローマ字読みにしてみたり…
なんで発音と綴りがこんなにも違うのでしょうか?
英語の歴史
英語の大雑把な成り立ちは、
少し前のブログ「言語の分類」でもう書いたので
気になる方はそっちも覗いて見て下さい。
言語系統と時代区分はこんな感じ。
インド・ヨーロッパ語族
→ゲルマン語派
→西ゲルマン語群
→アングロ・フリジア語群
→古英語(5~11世紀)
アングロ・サクソン語とも。アルフレッド大王が活躍。
中英語(11~15世紀)
フランス語大量流入。時代・地域・階級によって方言の差が大きい。
近代英語(16~19世紀)
発音がかなり変わる。シェイクスピアもこの時代。
現代英語(20世紀以降)
話者がすごく増える。借用語や新語もどんどん増える。
中英語あたりまでは日本のローマ字読みの様に
発音と綴りがほぼ一致していました。
15世紀の間に印刷技術の発展と書物の普及で綴りは固定されていきましたが、
発音はそのまま変化を続けたために今のような差異が生まれました。
正書法、つまり語を正しく表記するためのルールを
発音に合わせて改定することがなかったんですね。
大母音推移
15世紀初めから17世紀前半にかけて起きた長母音における変化のことで、正確には「アクセントのある長母音の舌の位置が一段ずつ高くなり、
それ以上高くなれないものは二重母音になった」
だそうです。
例えば現代英語の”name”(名前)という単語は
アクセントが“a”にあり、二重母音「エイ」の発音ですが、
昔は長母音「アー」でした。
だから「ナーメ」みたいな感じで発音していました。
(最後の”e”を読まなくなったのはまた別の理由なので後程)
“see”のように「セー」→「シー」とか。
現代英語の発音とローマ字読みに差が出るのは大体これの所為では…
黙字
書いてあるのに発音しない文字のことを「黙字(もくじ)」と言います。英語が難しく感じる原因の一つにこの黙字の多さがあります。
読まない理由はそれぞれ。
主なものを少し上げてみます。
・最後のe
一番よく目にすると思います。まず、元々は発音していて読まなくなったもの。
上で出てきた”name”を例にしますが、
古英語だと”nama” または”noma”
中英語だと”name” または”nome”
のように語末がa→eになっています。
こういったアクセントの無い母音の変化は「母音弱化」と言います。
まあ多少ごにょっとして聴き取れなくても
あまり支障がないような母音の発音は弱くなりがちです。
中英語ではとりあえず発音上も「エ」という音で残っていましたが、
更に弱くなって今では発音しなくなりました。
あともう一つ、綴りに後からeを加えたパターン。
綴りにも発音にも元からeは関係ありませんでした。
しかし、上で出てきた”name”のように、
① アクセント部分の長母音が二重母音化
② 語末のeが黙字化
これによって語末のeを、
直前の母音を長母音(二重母音)で読むための指示記号のように使い、
一番後ろにくっつけたものもあります。
win→wyn→wine
「ウィン」じゃなくて「ウィーン(現在はワイン)」ですよという風に。
・語頭の子音
“psychology”(サイコロジー、心理学)のように、最初のpを完全に無視していますが、
元は古典ギリシア語の”ψυχή”(プシュケー、息)由来の言葉で、
ラテン語にしたとき最初の文字が”ps”と置き換えられ、
それをそのまま輸入した為、今でも残っています。
英語的にこのような二重子音を発音するのは難しいらしく、
最初の文字は読まないことになりました。
学術用語など古典ギリシア語やラテン語から
直接借用しているものに多いようです。
また、ラテン語由来のフランス語を経由して入って来た語で、
入って来た時点で既に黙字となっていたもの、
“hour”のhとかもそのまま黙字になっています。
・昔は読んでいた子音
語末のeでもあったように、古英語では発音していたのに今では黙字となっているもの。
母音でも子音でも、発音上「強い」というのは
発音しにくいという事でもあるので、
段々音が曖昧になっていく(=弱くなっていく)ことがあります。
また、その発音を聞く側にとっても
聴き取りやすい音、聞き取りにくい音があります。
段々弱くなり最終的に発音しなくなったという事です。
他にも様々な理由で黙字は存在しています。
発音しやすいように音が変わっていくことは
どの言語にもよくあることです。
発音に合わせて表記の仕方を変えた言語もあります。
英語の綴りは比較的古い形を残していて
私としてはとても好みなのですが、
もしこれから変わってしまうとしたら
ちょっと寂しいな…
参考
Online Etymology Dictionary
https://www.etymonline.com/
尾崎天の英語史blog
http://blog.livedoor.jp/amaneozaki_english/