TOP > 英揮ブログ > 毒と薬について
豆知識
2016/12/20

毒と薬について

英揮ブログ

こんにちは、EIKIの馨です。

前回蜂蜜の話をした時ちょろっと毒素の話をしたので、
今回は毒っぽい内容です。


(前回のブログはこちらから)

とは言っても化学式とかそういうのは出てこないので理科嫌いの人でも大丈夫です。(笑)


毒と薬の違い


「毒」は危険なもの・悪いものというイメージを持つ人がいますが、

科学的には「薬」と明確な違いはなく、本来は同じものです。


では何が違うのか?それは量です。

たとえ猛毒とされるものでも適切な量ならば薬として使いますし、
薬とされるものでも飲みすぎれば毒です。

薬に限らずサプリメントとか酒とか調味料とか普段の生活にあるようなものにも当て嵌まりますが。


毒の種類


どのような基準で分類するか、
いろいろ種類はありますが、
まずはその毒がどこから来たのかで分ける方法です。


出典:田中真知 著 『へんな毒 すごい毒』 p.21



因みに英語だと種類によって別の単語を使ったりします。



Poison(ポイズン)…天然と人工を含む全ての毒

Toxin(トキシン)…生物由来の毒

Venom(ヴェノム)…動物毒の中でも蛇やサソリ、蜂など毒腺を持つものが出す毒液


毒が生物にどう作用するか、で分類することもあります。


神経毒…神経系にダメージを与えるため情報伝達が阻害される。
呼吸困難、心不全、痙攣などの症状。


血液毒…赤血球や血管を破壊。皮下出血、腫れ、痛み、吐き気など。

細胞毒…細胞膜を破壊したりDNAに障害を与えたりタンパク質の合成を阻害してみたり。

Etc.


こういった分類はあくまで便宜的にしているだけなので、
一つの毒が複数の性質を持っていたりもします。


毒の強さ?


同じ毒を同じ量飲んでも大人と子供で効きが違ったり、

人間には効かないけど犬にとっては猛毒、
など摂取した個体差によって違います。

また摂取の仕方、
飲み込んだのか、吸い込んだのか、皮膚から吸収されたのか、静脈に注射したのかなどでも違ってきます。

なので一概にこれが一番!とかは言えないのですが、
一応目安になる基準があります。


LD50(半数致死量)といって、その量を投与されると実験動物の半数が死ぬと予想される値を示します。

① LD50 20mg/kg (po) ②LD50 1.2mg/kg (sc)


これは両方とも同じ毒についての値なのですが、
①は経口摂取、②は皮下注射のときの値です。

大体16倍くらい違いますよね。

この毒は熱帯アマゾン地方で長年狩りで矢に塗る毒として使われたストリキニーネというものです。

獲物はこの矢で撃たれる(=注射と同じ感じ)のでしっかり毒が効きます。

この矢で仕留めた獲物を人間が食べても胃酸による分解があるので中毒に至らないわけです。


このLD50、
毒に対してだけ使われるものではありません。

例えば食塩はLD50 4g/kgです。

体重50kgの人が一度に200gの塩を食べたら危険ということです。


毒にはいろいろ種類がありますが、
基本的に生物毒の方が強い傾向にあります。

理由はある生物が敵または獲物に対して「効く」ことを前提に持っている毒だからです。

その多くはタンパク質からなる神経毒で、
相手を動けなくさせておいて逃げるまたは食べる。

一発で効かないと相手も動いちゃいますから、
結構キツ目の毒が多いわけですね。

進化の過程で足が遅かったり体が小さかったりで他の動物より不利なものが身に着けた武器なのです。

自分で毒を生成するものもいれば、
食べ物から摂取して蓄積しているものもいます。


因みに私が気になっているのはイモガイ。

綺麗な貝殻を持ち、
日本だと比較的暖かい海に住んでいます。


自分で毒を作ります。

めっちゃ強力なやつを。

貝類の中でもトップクラスです。

獲物をぶすっとやって丸呑みにします。

成人男性でも刺されたらイチコロ☆かもしれないので、
(刺された時の致死率6割!)気を付けてね!


でも、こんなやばい毒でも鎮痛剤として優秀だったりするんですよ。

実験ではモルヒネの1万倍の鎮痛効果とか、
ほかの薬ではだめだった幻肢痛にも効果ありとか。

習慣性もないし、
耐性もできにくいという事で、
アメリカではすでに使われているらしいです。

毒=薬の典型ですね。

紹介したい毒はまだまだいっぱいありますが、
今回はこの辺で。


≪参考≫ 田中真知『へんな毒 すごい毒』

関連記事